エンタメ契約の世界

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秘密保持契約書(NDA)のチェックポイント3 秘密情報の複製の可否

さて今回も秘密保持契約書のチェックポイントです。今回は、秘密情報の複製についての条項です。

秘密情報を複製することが契約書上可能かどうか


まあだいたいどの秘密保持契約書にも、秘密情報の複製について記載している条項があるかと思います。秘密情報の複製とは、秘密情報が記載された書類やデータをコピーしたりすることですね。


この秘密情報の複製については、だいたい以下のいずれかのパターンとなっていることがよく見受けられます。


1.秘密情報の複製は完全に禁止(全て開示者の事前承諾を要する)
2.業務上必要な範囲での複製は可能で、必要な範囲を超えた複製は禁止



だいたい上記のいずれかに該当する記載になっていると思います。


で、問題なのが1のパターンです。秘密情報が記載された書類、データ、媒体等の一切の複製即ちコピーが禁止されるわけですが、これは現実的な内容だとは思えません。まず秘密情報が記載された書類という観点でいえば、そうした書類を業務に携わるメンバーで共有等するために、コピーをとって、各メンバーに配布するといったことが考えられます。秘密情報が記載された書類をコピーせずに、そのたった一つの書類を全員で回し読みするようなやり方はおよそ現実的ではないです。


また秘密情報が記載されたデータのコピーが禁止というのもやはり現実的ではありません。そうしたデータを業務上必要な範囲でファイルサーバーにコピーして保存して必要なメンバーで共有するといったやり方が当然考えられますが、それを禁止するというのは到底現実的とは思えません。


上記のように、秘密情報の複製を完全に禁止するという規定は、現代の業務の進め方などを考慮すると、とても現実的な内容ではないと考えます。おそらく何らかの秘密保持契約書のモデル契約書のようなものがそのような書き方になっていて、それをベースにして作られた秘密保持契約書を通じて拡散していったように思いますが、ここの部分は、ぜひとも現実的な内容に修正すべきだと考えます。


適切な内容への修正


現実的な内容とは、即ち上記のパターンのうちの2の内容です。業務上必要な範囲での複製は可能とする形です。これが現実的な秘密保持義務のあり方だと考えます。時折、秘密保持契約書の中には、あまりにも秘密保持義務を厳しめにすることで非現実的な内容になっているものが見受けられますが、それは適切ではないと考えます。


現実的に可能な秘密保持義務という観点でもって秘密保持契約書を作るべきと考えます。そういう意味で、この秘密情報の複製の可否を見るだけで、その秘密保持契約書が全体として現実的な内容になっているかどうかという傾向があらわれてきます。


秘密情報の複製を完全に禁止しているようなものは、他の部分でも非現実的な内容になっているか、又はデータファイルやメール送信といった概念が完全に抜け落ちているという意味での非現実的な内容になっていたりします。



秘密保持契約書全体として、現実的な秘密保持義務とするために、まずはこの秘密情報の複製の可否という点を適切な内容にするべきでしょう。



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