エンタメ契約の世界

芸能、アニメ、ゲーム等のエンタメに関する契約について色々と書いているブログ。

沢尻エリカのCM・広告関連の違約金

今回は、沢尻エリカさんのCM・広告関連の違約金を考察してみたいと思います。


よくタレントが薬物所持その他の理由で逮捕等されて、CMや広告等を降ろされることになった場合、「違約金」という言葉を最近よく聞くようになったかと思います。


要は、薬物所持等で逮捕されたことでCMや広告等に起用していたそのタレントを、CMや広告等から降ろすことに伴い、そうしたCMや広告主の企業からタレントの所属事務所に対して請求する違約金という体裁で報道されることが多いように見受けます。


私としては、この「違約金」という言葉は、正直ピンとこない部分もあります。といいますので、私自身、これまでタレントのCMや広告等の契約書を100件以上手掛けてきました。実際にGoogleで「広告出演契約書」で検索すると上から4番目に私の事務所サイトが出てきますので、そのおかげか今でもご依頼がよく発生するものです。




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ですので、タレントのCMや広告出演に関する契約書をよく手掛けてきましたが、契約書の中に、「違約金」という文言は基本的に使用しません。業界団体が作成している広告出演契約書のモデル契約書においても、そうした「違約金」という文言は出てきません。



もちろん、この世には様々なフォーマットの広告出演契約書がございますので、中には違約金という文言が記載されているものもあるでしょうが、例えば私自身が関わってきた大手広告代理店の所定契約書においても、違約金という文言は基本的には出てきません。



よって、私としては、タレントが薬物所持等で逮捕されたときに出てくる「違約金」という文言に違和感を覚えるのです。少なくとも広告出演契約書上は、そうした文言は出てきませんので(全くないとはいいません。違約金の文言が入っている広告出演契約書も少数ではあるものの、存在するとは思います)。




では報道等でよく言われる「違約金」とは、何を指しているのか。それはおそらくですが、ほとんどの広告出演契約書に記載されている、いわゆる「契約料の返還」+「契約違反による損害賠償」を合わせたものを指していると思われます。



なので、私としては、報道でいわれるような違約金を、このように考えております。

違約金 = 返還する契約料 + 契約違反による損害賠償額



上記のうち、返還する契約料というのは比較的算出しやすいです。契約料は契約書に明記しておりますので。ただ、契約料は日割計算で返還するとしている契約書もそれなりにあります。日割計算とは、契約解除日(又はそのタレントのCMや広告等が使えなくなった日)から本来の契約期間満了日までの分を日割計算して返還するというお話しですね。要は使用した期間の分は返還しないよということです。


この日割計算の部分の記載は契約書によってややマチマチだったりしますので、一概にこうなっているとは言い難い部分もありますね。


それと上記の違約金に含まれるもののうち、算出しづらいのが契約違反による損害賠償額ですね。だいたい契約書上は、「契約違反により発生した全ての損害を賠償する」みたいな記載ですので、具体的に、契約違反をしたらいくらみたいな記載はありませんね。というか実際、契約違反と言っても色々なケースがありますので、予め予定金額を決めておくのは難しいため、「契約違反により発生した全ての損害を賠償する」みたいな記載にならざるを得ません。



この部分がなかなかブラックボックス的だったりして、外部からはうかがい知れない部分だったりします。上記の契約料の部分については、おそらくこのタレントの場合契約料がこのぐらいだから、返還する契約料はこのぐらいかななんて推測しやすいのですが。


沢尻エリカさんの違約金はどうか

でまあ本題である沢尻エリカさんのCMや広告の違約金はどうなのか。


まずCMや広告の契約料の返還は間違いなく発生するでしょう。中には沢尻エリカさんを起用したばかりのCMもあったりしたようですので、契約料を満額返還するというケースもそれなりに多そうです。沢尻エリカさんの逮捕時は、CMや広告は少なくとも7~8社はあったように見受けられますので、それらの契約料返還が発生しているでしょう。後はCM等では放送されないイメージモデル的なものもあるかもしれません。よくある〇〇親善大使とか、道の駅観光大使とか、そういうのはCM等では放送されなかったりすることが多いですが、それらもある種の広告出演契約になりますので、そういったものもあればそれらの契約料返還のお話しが出てきますね。



それと後は、契約違反による損害賠償額ですね。そもそも契約違反をより具体的に言いますと、広告出演契約書の中には、「イメージの尊重」というような感じの条文がありまして、その中に、「タレントは、クライアントの品位・名誉や商品を傷つけ、又はイメージダウンさせるような言動を行ってはならない」的な文言があったりしますので、それを守っていないということでの契約違反ですね。もっと具体的に「犯罪行為を行ってはならない」と記載されている場合もあったりします。沢尻エリカさんの今回の薬物所持が、こうしたイメージの尊重条項に違反するというのは明白かと存じます。



こうした契約違反に基づき契約を解除し、損害賠償を請求するというような形になりますね。一般的には。



そしてこの損害賠償額を算出するというのが色々と難しい部分も多く、考察の余地もありますので、ここら辺のお話しは次回より詳細に考察してみたいと思います。