エンタメ契約の世界

芸能、アニメ、ゲーム等のエンタメに関する契約について色々と書いているブログ。

セクシー田中さんの件で小学館は何をしていたのか

芦原先生が執筆されたセクシー田中さんのドラマ化における脚本問題は、いまだ収まる気配がなく、現在は小学館の対応が注目され始めています。


本件の契約の構造

そもそもとして、セクシー田中さんをドラマとして映像化する場合、「原作利用契約書」を締結するわけですが、この契約締結の当事者は、おそらく小学館と日本テレビ(ドラマプロデューサーあるいは制作会社)であると考えられます。


漫画等の実写化にあたっての「原作利用契約」において、作家さんが直接契約の当事者になるようなことはほとんどありません(全くないわけではないですが、少数です)。通常は、出版社とテレビ局(あるいはドラマプロデューサー又は制作会社)との間で契約を締結します。


そもそもとして、芦原先生のセクシー田中さんを出版するための契約「出版契約書」を芦原先生と小学館との間で締結するわけですが、その「出版契約書」の中で、おそらく作品(漫画)の映像化等の二次利用については、小学館に委任する旨の条項があるものと推測できます(一般的にそのような条項をいれることが多いです)。



そうした「出版契約書」により委任された権限に基づき、出版社である小学館はセクシー田中さんのドラマ化という二次利用の契約当事者になっているわけです。


小学館は何をしていたのか

これまでの報道等を見る限りでは、セクシー田中さんの脚本を巡る問題では、芦原先生自身が個人的に日本テレビ側に掛け合って交渉等をしていたように見えてしまいます。正直、小学館の対応の痕跡が全く見て取れないので、本来の契約当事者である小学館側がどういう動きをしていたのか、芦原先生をどのようにサポートされていたのかが全く見えてきません。


本来であれば、作家である芦原先生が単独でテレビ局に掛け合うという事態は望ましくはなく、契約当事者である小学館がテレビ局に掛け合うべきだと思います。しかしながら、今のところそういう情報が見受けられず、小学館としても、今回の件について何らコメントをしない旨の発表をしています。



これでは、小学館が何もしていなかったと思われても仕方がありません。よって、やはり小学館はどういう対応をして、どう芦原先生をサポートしていたのかを可能な範囲で発表すべきではとも思います。


小学館が発表をしない理由

小学館が発表をしない理由として最も考えられるのが、秘密保持義務ですね。ことの経緯を外部に発表することは、小学館と日本テレビ(あるいはドラマプロデューサー又は制作会社)との間で締結した「原作利用契約」の秘密保持条項に違反するおそれがあるためです。これはこれで理由としては理解できます。しかしながら、ここまでことが大きくなってしまった以上、何らかの発表は必要ではと考えます。秘密保持義務に触れない範囲で何らかの発表をすることも可能だとは思いますので、そういった対応をすべきではないかとも思います。


若しくは、日本テレビから、発表しないようにという何らかの圧力のようなものがかかっているというのも考えられます。


他にも考えられることはありますが、いずれにせよ、小学館としては作家さんたちの信頼を損なわないためにも、可能な範囲で今回の件についての発表をすべきではと思います。