エンタメ契約の世界

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タイトル(題名)の付け方 業務委託基本契約書

業務委託基本契約書


今回より、しばらく「業務委託基本契約書」の作成ポイントについて取り上げていきたいと思います。


この業務委託基本契約書は、おそらくIT関係の契約書で最もよく見るものであると思われます。IT系企業で総務や法務を担当して契約書をチェックする方は、年中通してこの契約書を見ているという方もいらっしゃると思います。



さて、この業務委託基本契約書を取り交わす場面として最も多いケースが、「受託開発」と呼ばれるソフトウェア、システム、ウェブサイト、アプリケーション等の開発業務の受発注において、発注者と受注者との間で取り交わす場合です。他にも、保守業務、コンサルティング業務、ウェブサイトの運営代行業務、広告物制作業務、デザイン制作業務、楽曲制作業務、物流業務等といった業務の受発注における基本契約事項を定める契約書として、発注者と受注者との間で取り交わされることがあります。


かなり平たく言ってしまえば、「業務を誰かに依頼する」ことの契約書になりますので、企業間の様々な取引に該当する契約書になります。



尚、「業務委託基本契約」は、業務委託に関する基本事項を定めることを目的とするため、通常、業務の細部や具体的な委託料等は別に個別契約で定めることになります。ここにいう「個別契約」は、契約書の形でなくてもよいです。実務上、注文書や発注書等を個別契約という位置づけにして取引を進める場合も結構多いです(この個別契約についてはまた別の機会に詳しく説明致します)。



契約書タイトル(題名)の付け方

       ____
     /⌒  ⌒\
   /( ●)  (●)\   契約書のタイトルのつけ方って
  /::::::⌒(__人__)⌒::::: \  よくわからないんすけど。
  |     |r┬-|     |   
  \      `ー'´     /  






   / ̄ ̄\ 
 /   _ノ  \ 
 |    ( ●)(●)   その契約書が何を目的にしているかを
. |     (__人__)    一行であらわすようにすればよいと思う。
  |     ` ⌒´ノ   
.  |         }    
.  ヽ        }     業務委託基本契約書であれば、
   ヽ     ノ     「ソフトウェア開発業務委託基本契約書」
   /    く  \   のようにどういった業務を委託することの 
   |     \   \   基本契約であるのかということが       
    |    |ヽ、二⌒)、  タイトルにあらわれていれば良いと思う。



契約書を作成するにあたって、まずは契約書のタイトルを記載するところから始まるかと思います。少なくとも、私が契約書を作成するときはそうしておりますし、おそらくだいたいの方がそうではないでしょうか。


さて、この契約書のタイトルですが、「こうでなければならない」という法的なルールは当然ありません。基本的には、その契約書が何を目的とした契約書であるのかが1行であらわれていれば良いと思います。例えば、「ソフトウェア開発業務委託基本契約書」であれば、誰がみてもソフトウェアの開発業務を委託することに関する基本契約だと考えられます。単純に「契約書」としてしまうのも間違ってはいないのですが、どのような目的の契約書なのかがわからないため、望ましくはないです。



タイトルについて、いくつか例を挙げていきます。
業務を委託することに関する基本事項を定めることを目的とする契約であれば、一般的には「業務委託基本契約書」になるかと思います。このタイトルが最もケースとしては多いです。ただその他にも、より具体的に「ソフトウェア開発業務委託基本契約書」「コンサルティング業務委託基本契約書」といったように委託する業務の名称まで含める場合もあります。こういったタイトルは契約書がなにを目的としているのかがよりわかりやすくなりますので、良いと思います。



他には、「システム開発業務請負契約書」といったように、「委託」ではなく「請負」という文言を使う場合もあります。尚、「請負」という概念については、また別の機会に詳しく説明致しますが、こういうタイトルでも特に問題はありません。あとは「業務委託契約書」といったように、「基本」という文言を省いている場合もあります。業務の具体的な内容や委託料の金額を別に定めるという形式(個別契約を別に締結することを前提とする形式)の契約書であれば、それは「基本契約書」になりますので、そういった場合は出来れば「基本契約」であることを明確にした方がわかりやすいのではないかと思います。従って、「基本」という文言は省かないほうが良いのではと思います。


但し、業務の具体的な内容や委託料の金額まで定めるタイプの契約書(個別契約を前提としない契約書)であれば、それは「基本」という文言を省いて「業務委託契約書」「ソフトウェア開発業務委託契約書」といったようなタイトルで良いと思います。


あとは、「取引基本契約書」というタイトルも見ますね。これでも良いと思います。相互に業務を発注し合う可能性がある場合に、取引基本契約書というタイトルを付けるという理由がある場合もありますが、特にそうした理由なしに「取引基本契約書」というタイトルを付けている場合もよくあります。



契約書のタイトルの付け方について、上記のように私の見解を述べさせて頂きましたが、次回は、この契約書のタイトルの法的効力(契約書のタイトルに何らかの効力があるのか)を取り上げたいと思います。