契約書のタイトルは契約書の内容に影響を与えるか
さて、今回は契約書のタイトル(題名)に法的な効力があるのかどうかということを取り上げてみたいと思います。「法的な効力」とは、タイトルの付け方で契約書の意味が変わるのか、契約当事者を縛る法的な効果があるのかどうかということです。例えば「業務請負契約書」というタイトルならば、必ず請負契約になるのかどうかということです。
____ /_ノ ' ヽ_\ /(≡) (≡)\ /::::::⌒(__人__)⌒::::: \ 契約書のタイトルに法的な効力はあるんですか? | |r┬-| | \ `ー'´ / / ̄ ̄\ / ノ \ \ | (●)(●) | ありません。 . | (__人__) | 契約書の内容(本文)が優先されます。 | ` ⌒´ ノ . | } . ヽ } /⌒ ー‐ ィ ヽ / ,⊆ニ_ヽ、 | / / r─--⊃、 | | ヽ,.イ `二ニニうヽ. |
結論から言うと上記のとおりです。契約書のタイトルには、法的な効力はありません。どのようなタイトルをつけようが、契約書本文の内容が最優先されます。従って、契約書のタイトルが「業務請負契約」となっていても、契約書本文の内容が請負契約ではなく準委任契約の内容になっているならば、その契約書は準委任契約とみなされます。尚、準委任契約とは、法律行為でない事務の処理(作業、業務等)を委託する契約をいいます。一般的なソフトウェア保守契約、コンサルティング契約、システムエンジニアリングサービス(SES)契約等がこの準委任契約に該当します。但し、契約内容によっては、これらの契約であっても請負に該当する場合がありますので、注意が必要です。
契約書のタイトルの法的効力に関する裁判例
契約書のタイトルの法的効力を考える上で参考になる裁判例があります。
(東京地方裁判所平成19年(ワ)第34948号)
この裁判は、コンピュータシステムの開発に係るコンサルティング契約を締結した原告(受託者)と被告(委託者)との間で、原告の債務不履行を理由とする契約解除に起因する代金の支払いを巡る裁判です。この裁判の本筋のところを説明すると長くなりますので、今回のブログ記事である「契約書のタイトルの法的効力」に関係するところのみを取り上げます。
原告と被告との間で締結された契約は「コンサルティング契約」でした。判決文のなかでは、詳細に契約書のタイトルまでは記載しておりませんでしたが、おそらく「コンサルティング契約書」といった趣旨のタイトルであったと考えられます。コンサルティング契約は、上に書いたとおり、準委任契約にあたります。しかし、この裁判では原告と被告との間で締結したコンサルティング契約を請負契約とみなしました。
請負契約とみなした理由としては、「業務分析、要求定義、開発管理といった、システム構築に係る請負契約の一部分であるとされる業務が契約に含まれているため」としました。業務分析や要求定義に請負の要素があるかどうかについては議論のあるところですが、いずれにせよ、契約書の法的効力を、契約書のタイトルではなく、契約書の本文を根拠に導いたということがいえます。この裁判では、原告と被告との間に締結されたコンサルティング契約を請負契約であるということを前提として、諸々の問題を判断しておりました。
契約書のタイトルには、結局のところ法的効力はないため、その契約が何を目的としているのかということが端的にあらわれていればよく、どういったタイトルにするかということを過敏になって考える必要はないと思います。大切なのは契約書本文の内容ですから。
とまあ、契約書のタイトルの法的効力について、上記のように私の見解を述べさせて頂きました。次回は、契約書タイトルのすぐ下に数行程度記載する「前文」について取り上げたいと思います。