エンタメ契約の世界

芸能、アニメ、ゲーム等のエンタメに関する契約について色々と書いているブログ。

前書きの書き方について 業務委託基本契約書

「前書き」とは


これまで2回、契約書のタイトルについて、その付け方と法的効力を取り上げました。


タイトル(題名)の付け方 業務委託基本契約書
タイトルの法的効力 業務委託基本契約書


今回は、契約書を作成する上で、タイトルに続いて記述することになるであろう、「前書き」を取り上げたいと思います。


前書きといってすぐにピンと来る方は少ないと思います。なんというか、契約書の挨拶文的なものだと私は思っておりますが、平たく言うと「株式会社○○○○(以下「甲」という)」で始まるところになります。タイトルのすぐ下の数行程度の文章です。


ほとんどの契約書が、タイトルを書いて、そのすぐ下に前書きを数行程度記述するという形で始まっていると思います。私もこれまで契約書を多数見てきましたが、タイトルの下に前書きがないものは、正直記憶にありません。もしかしたら、探せば1つか2つぐらいはこれまであったかもしれませんが、少なくともすぐには思い出せません。いずれにせよ、タイトル+前書きで始まるスタイルはかなり一般的です。


前書きには何を書けば良いか

     ____   
   /      \ 
  /  ─    ─\  
/    (●)  (●) \  タイトルを書いて、次に前書きを書こうとすると
|       (__人__)    |   ピタッと止まってしまうんだお。
/     ∩ノ ⊃  /    
(  \ / _ノ |  |    こっから契約書スタートって感じなので、
.\ “  /__|  |    何を書けば良いのか考えてしまうお。
  \ /___ / 










   / ̄ ̄\ 
 /   _ノ  \     ある程度ルーチン的な方法に落とし込むと
 |    ( ●)(●)   比較的書きやすくなる。
. |     (__人__)    
  |     ` ⌒´ノ   
.  |         }     簡単に言うと、次の2つのことを書けばいい。
.  ヽ        }     
   ヽ     ノ     ①契約の当事者
   /    く  \   ②誰が誰に業務を委託することの契約なのか
   |     \   \   
    |    |ヽ、二⌒)、   


業務委託基本契約書の前書きに書くことは、上記のとおり、基本的にポイントとしては2つです。
①契約の当事者
②誰が誰に業務を委託することの契約なのか


上記のポイントを前書きとして文章化するとだいたい、次のような形になります。

「株式会社○○○○(以下「甲」という)と株式会社○○○○(以下「乙」という)は、甲が乙に対し業務を委託する際の基本契約事項に関して、以下のとおり契約(以下「本契約」という)を締結する。」


上記の前書きをポイント毎に分解すると次のようになります。
①契約の当事者
「株式会社○○○○(以下「甲」という)と株式会社○○○○(以下「乙」という)」

②誰が誰に業務を委託することの契約なのか
「甲が乙に対し業務を委託する際の基本契約事項に関して、以下のとおり契約(以下「本契約」という)を締結する。」


さて、ポイント毎に解説致します。
契約の当事者のところは本当にごく一般的な形で、契約当事者を契約書の中であらわす際、おそらくこの形が最も見受けられるのではないかと思います。尚、甲と乙のところは、甲を「委託者」、乙を「受託者」という言い方に置き換える場合があります。前書きであらわすと次のように形です。
「株式会社○○○○(以下「委託者」という)と株式会社○○○○(以下「受託者」という)」


他には、会社名の略称で表現する場合もあります。例えば私の事務所は「行政書士藤枝法務事務所」なのですが、頭文字をとって「GFO」といった具合です(「Gyouseishosi Fujieda Office」の略称)。例:「行政書士藤枝法務事務所(以下「GFO」という)と株式会社○○○○(以下「○△×」という)」


次に「誰が誰に業務を委託することの契約なのか」という部分ですが、これは「甲が乙に対し業務を委託することに関する契約である」ということがあらわれていれば良いと思います。最もシンプルに表現をすると「甲が乙に対し業務を委託することに関して、以下のとおり契約(以下「本契約」という)を締結する」となります。これで十分OKだと思います。


さらに具体的に、どういった業務を委託するのかをあらわすのもありだと思います。
例:「甲が乙に対しソフトウェアの開発業務を委託することに関して」


このように記載するポイントを明確にすれば比較的前書きは書きやすいです。尚、時折、この前書きの部分で理念のようなものが記載されていることを見受けることがあります。例えば「甲及び乙双方の信頼に基づき、双方の長期的な利益及び発展を目的として、甲は乙に対し業務を委託し、乙はこれを受託することに関して、以下のとおり契約(以下「本契約」という)を締結する」といった具合です。




ご覧頂けるとおわかりかと思いますが、正直このような理念的なことを書くと冗長になります。この調子で契約書本文をこの後書いていくと、契約書全体として大変冗長なものとなってしまいます。契約書は、双方の具体的な決め事をきっちりとあらわすものですので、理念のような抽象的な事項は特に記載しなくても良いと私は考えます。




以上が、契約書の前書きについてとなります。前書きは契約書の目的によっては、少し書き方が異なってきますので、それぞれ契約書の解説をする際に、また取り上げたいと思います。次回は、第1条の書き出しについて取り上げます。