エンタメ契約の世界

芸能、アニメ、ゲーム等のエンタメに関する契約について色々と書いているブログ。

「利用契約書」と「利用申込書+利用規約」形式の選択について

私は、契約書の作成や修正対応等を専門として、日々業務を行っております。1週間の業務うち、こうした契約書関係の業務が大半となっております。そうしてほぼ毎日のように契約書と相対しているわけですが、それでも契約書の体裁等で色々と悩むことがあります。


ここ最近悩むことは、ソフトウェア、システム、ASPサービス及びSaaS等(以下「ソフトウェア等」といいます)の利用に関する契約の場合の契約書式の構成及び体裁です。こうしたソフトウェア等の利用に関する契約の場合、「利用契約書」という甲乙形式の契約書と、「利用申込書+利用規約」形式という二つの書面構成の方法が考えられます。



正直なところ、「利用契約書」「利用申込書+利用規約」のいずれでも良いです。比較多数の利用者を想定した月額費用モデルのASPサービスやSaaSの利用については、「利用申込書+利用規約」という形式が多いように思います。これは、利用申込書をASPサービスやSaaSの運営者に提出して申込み、当該運営者が申込みを承諾することで、別紙利用規約を遵守することを条件に、申込者がソフトウェア等を利用することができるようになるというものです。この場合、申込書の提出及びそれに対する運営者の承諾をもってソフトウェア等の利用契約が締結されたものとみなします。


続いて「利用契約書」形式ですが、これは企業間で、且つカスタマイズ等の作業を伴うようなソフトウェア等の利用に関する契約の場合によく見受けられるように思います。何故このような場合に利用契約書形式が用いられるかについては、おそらくですが、単純な月額費用モデルよりも、カスタマイズ費用やその他初期費用が結構大きいものになるので、しっかりとした甲乙形式の契約書を結んでおきたいというソフトウェア等の運営者側の思惑があるのではないかと思います。


「利用契約書」は甲乙形式ですので、ソフトウェア等の運営者と、利用者双方の署名捺印をします。一方、「利用申込書+利用規約」の場合は、利用申込書に申込者であるソフトウェア等の利用者の署名捺印をするのみで、通常、ソフトウェア等の運営者の署名捺印をすることはありません。


こういった署名捺印の相違やイメージ等から「利用申込書+利用規約」形式の方が軽い(ハードルが低い)と見られることがあります。尚、その法的効力の違いについて検討するとまた長々となってしまうので、ここでは言及は避けます。


ほんと雑感として取り留めなく書きましたが、こういった「利用契約書」「利用申込書+利用規約」形式のいずれとするかについて、よく業務上迷うことがあります。基本的には、クライアント(依頼者)のイメージするところを最優先して、「利用契約書」「利用申込書+利用規約」のどちらかにするといった決め方をすることが多いです。しかし、クライアント(依頼者)のイメージが定まっていない場合は、こちらで「利用契約書」「利用申込書+利用規約」のいずれとするかを判断したりします。



今回は、ちょっと閑話休題として、特にこれといった落ちもなく、日々の業務を通じて思う雑感について述べさせて頂きました。