エンタメ契約の世界

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秘密保持契約書(NDA)のチェックポイント6 損害賠償責任の範囲


さて、秘密保持契約書のチェックポイントもこれで大詰めですね。あと少しでこの秘密保持契約書のチェックポイントシリーズも終わりを迎えます。



今回は、秘密情報の受領者が契約違反等をして情報が漏洩した場合の損害賠償責任の範囲ですね。これまでと同様に、今回も、情報開示者側なのか情報受領者側なのかで見るべきポイントが変わってきます。繰り返しますが、どの契約書もそうなのですが、自分が契約書におけるどちらの立場にあたるのかを踏まえたうえで内容をチェックし、修正をするべきなのです。



秘密情報を開示する場面が多いと想定されるのであれば、そうした視点で秘密保持契約書の各条項をチェックする必要があります。それはすなわち、できるだけ受領者による情報の取り扱いを厳しめにし、情報漏洩等の問題が発生した場合は受領者側にしっかりと責任を負担させることができるようにするという視点です。



逆に情報を受領する側からすれば、受領する情報の取り扱いがあまり厳しくなりすぎないようにし、そして情報漏洩等の問題が発生した場合は過大な損害賠償責任を負うことがないようにという視点で秘密保持契約書をチェックし、修正する必要があります。



そして今回の損害賠償責任の範囲もだいたいそういう視点でのお話しです。



秘密保持契約書においては、だいたいいずれも情報受領者が情報漏洩等の契約違反をした場合の損害賠償責任について記載をします。この損害賠償責任の範囲というものが、契約書によって多少違いがあります。



情報開示者側からすれば、開示した情報が漏洩等してしまうとその損害も計り知れないので、発生する可能性のある損害についての賠償責任を全て情報受領者に負わせたいわけです。単に直接発生した損害のみならず、情報漏洩による間接損害や逸失利益といったものも含めて違反をした情報受領者側に責任を負わせたいわけです。なので、秘密保持契約書の損害賠償責任に関する記載もそのようにする必要があります。



一方情報受領者側からすれば、あまり過大な損害賠償責任は負いたくないわけです。ですので、情報漏洩等の違反をした場合は、その情報漏洩等によって情報開示者に直接発生した損害というところまでを損害賠償責任の範囲としたりするわけです。要は間接損害や逸失利益については損害賠償責任を負いませんよということです。中には、業務委託料の金額を上限とするというやり方もありますが、秘密保持契約書の場合はこの記載をしても開示者側が承諾しない場合が多いので、あまり現実的ではないかなあと思います。




但し、一度損害賠償責任の範囲を業務委託料の金額を上限とするという形にして情報開示者側にぶつけてみるというのもありかもしれません。もしかするとそのままとおるかもしれませんので、ただ繰り返しますが、経験上、情報開示者側が承諾しないという可能性の方が高いので、その場合は、上記のように直接発生した損害を上限とするという記載が落としどころになるかなあと思います。



損害賠償責任の範囲というのは、秘密保持契約しにかかわらず、業務委託契約書やその他取引契約書においても、割と綱引き(その範囲を巡ってのやり取り)が発生しやすいところですので、重要なチェックポイントの一つだとは思います。ですので、今回の内容は、秘密保持契約書のみならずその他契約書全般においても共通する考え方ではありますので、他の契約書においてもチェックポイントの一つになるかなと思います。



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